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「ん? 何かしらコレ…」

 とある休日の午後。
 御坂美琴は自販機でヤシの実サイダーを買うと、自販機に立てかけられている何かに気付く。
 それはどうやら本のようだがタイトルは書かれてなく、表紙裏表紙共に紫色がベースで銀の止め具が七箇所付いており、
 結構大きめな厚手の本だった。
 美琴はその本を手に取ると周りをキョロキョロと見渡した。

「誰か忘れて置いて行っちゃったのかしら。うーん…」

 美琴がそう言うとサイダーの缶を自販機の上に乗せ、その本を開いた。
 中は何やら文字や絵が描かれていたが、美琴にはそれを読み取ることは出来ない。
 わけもわからずページをぺらぺらと捲っていると、ページとページの間が光っているのに気付いた。
 その光はきれいなピンク色で、何やら声みたいなのが聞こえてくる。
 美琴は恐る恐るそのページを開くと、そこにはキラキラと光っている文字が書かれてあった。

『……? お姉、さま? お姉さま~~~~ん♪』
「へっ!? く、黒子!? な、なんで黒子が本の中に!? しかも手のひらサイズ…」

 美琴が光る文字に触れると、閉じ込めていた蛍が飛び出してくるようにピンクの綺麗な光が本から湧き上がってきた。
 その光の奥には白井黒子っぽい手のひらサイズの女の子が居て、美琴を見るなり飛びついてきた。
 白井っぽい女の子は美琴の頬にくっつくと「お姉さまお姉さま、はぁはぁ…」と頬擦りしてくる。
 美琴はその行為にこのちっこいのは確実に黒子だと感じ親指と人差し指でその少女の服を摘んで引き離した。
 小さな白井からは赤いハートがぽわぽわと出てきており、美琴は不覚にも可愛いと思ってしまった。

「あ、アンタ…ほんとに黒子?」
『もちろんですわお姉さま! 黒子の顔を忘れてしまったんですの!? 黒子は、黒子は悲しいですわっ! …うぅ』
「その口調、さっきの変態性…どうやら本物みたいね」
『それよりお姉さま? いつからそんな大きくなられたのですの? さっきまでは黒子より少し大きかったくらいでしたのに』
「はぁ? 何言ってるのよ黒子。私が大きくなったんじゃなくて、アンタが小さくなったんじゃない」
『へ? そうなんですの? ……、そういえば自動販売機がやたら大きく見えますわ』
「でしょ? てか何でアンタが本の中に入ってんのよ? 変な能力者に何かやられたの?」
『何で…と言われましても、わたくしはさっきまで常盤台の寮にいたんですのよ? お姉さまはちょっと出かけてくるって言ってましたけど』
「ん……?」

 美琴はそう白井が言ったので、何か覚えがあったのか首を傾げた。
 そういえばここに来る前白井にどこに行くのか追求されたので、美琴は「ちょっと出かけてくる」って言った気がする。
 美琴は本を地面に置き、ちび黒子を左手に持つと、右手でゲコ太の携帯を取り出し白井に電話をかけた。
 もし本物ならこのちっこいのが電話に出るはずだ。

【……はい。お姉さま? どうなされたんですの?】
「…」

 美琴はちび黒子を見るが、別に携帯を取り出しているわけでもなく、美琴の手のひらの上が気持ちいいのか親指に頬擦りしている。
 電話で話している白井は今常盤台の寮にいて、風紀委員の仕事をしているらしい。
 美琴はほっとしたのと同時に何やらワケがわからなくなってきたので、とりあえず「えっと、なんでもない。じゃあね」とだけ言って電話を切った。
 そしてちび黒子に視線を落とす。
 よくよく見てみるとちょっとデフォルメされているような、されてないような…。
 手のひらにいるちび黒子は依然どこからかハートをぽわぽわと出しており、体をよじって喜びを表現しているようだ。

「ねえ黒子。そういえばアンタさっきまでは私といたって言ってたわよね?」
『はいですの。お姉さまったらまたあの殿方を探しに行ったんですわ! そうに決まってますわ! キィィィィィイイイ!!!』
「あ、あああの殿方!? ま、まさか私とあの馬鹿もこの中にいるっていうの!?」
『…? はいですの。毎日会ってるじゃありませんの』
「ちょっちょちょ…ど、どこに行ったのよ!? 私は!?」
『そ、そんな事わたくしは存じませんわ。お姉さまは出かけるとだけしか仰っておりませんでしたもの』
「そ、そういえばそうだわ…って、ん? と言う事は…?」

 美琴はさっきまでの白井とのやりとりを思い出し、考える。
 今の自分がここにいるのだから、この中の自分ももしかしたら本の中でここに来ているのではないかと。
 そう思い美琴はちび黒子を本に置くと、ちび黒子は何やら文字に吸い込まれ消えていった。
 その文字も何やら読み取れない文字だったが、そのページを見開きでよくよく見ると、何やら地図になっているような気がした。

「この地図の形……、第七学区だ」

 美琴がそのページを見渡すと確かに第七学区の地図のようで、細かく読めない文字であるが書かれてあった。
 学舎の園もきちんと一つ一つ学校が分かれているし、常盤台女子寮…これがさっき光っていた文字だ。
 それに上条当麻常連の病院、最近閉鎖したと噂されている三沢塾…。
 間違いなくここ学園都市の第七学区だ。
 とすると今自分がいる公園は…これか? 美琴は読み取れない文字に触れると、そこから声が聞こえてきて別のページが光り出した。
 その光は先程ちび黒子を召還したようなピンク色の綺麗な光で、美琴はそのページを開く。

『ったくアイツは一体どこで何をしてるのよ! 電話には出ないし、メールは返さないし!』
「…いる」

 そのページで光っている文字に触れると、先程のちび黒子同様にちび美琴がページの上に現れた。
 ちび美琴は何やらイライラして携帯をいじっており、頭からビリビリっと漏電している。
 美琴は恐る恐るそのちび美琴を摘んだ。

『わっわっわっ! な、なに!? なに? なんなの!? …って、私? 大きい私が…いる』
「間違いない。このちっこいのは私ね。電磁波で分かるわ」
『あ、あああアンタ一体何者なの!? あ、あれね! 私の格好した能力者ね! やたらでっかいし妹達とは思えないし!』
「私は私よ。御坂美琴。常盤台中学二年生」
『御坂美琴は私よ! …て、嘘。確かに出てる電磁波が私と一緒だわ…』
「わかってくれた? それより何でアンタそんなにイライラしてんのよ?」
『ふえ? そ、それはあの馬鹿に電話やメール沢山してるのに全然出てくれないし返してくれないから…』
「あの馬鹿? …あー、あの馬鹿ね! ホントあいつは私の事なんだと思ってるのって聞きたくなるくらいのスルーっぷりよね!」
『そうなのよ! ったくこっちの気も知らないで! あいつの周りにはいっつも胸が大きい女の子がいるし!』
「私だっていつかはあんくらいなるわよね!? あー、何か私もイライラしてきたわ!」
『アンタもよく分かってるじゃない! ったくあの馬鹿今度会ったら超電磁砲の一発や二発…って、ん?』
「あれ…? ま、まさか…やっぱりアンタも、あ、あああいつの事…その、す、好き…なの?」
『すっ!? すすすすすすすっ!!!???? あ、アンタはどうなのよ!? まさかアンタもあいつの事、好き…なんじゃ』
「すっ!? すすすすすすすっ!!!????」

 美琴とちび美琴はボボンと頭から湯気を出し、顔を真っ赤にすると同時にふにゃーとした。
 美琴は本の前で座ると、ちび美琴を両手で優しくすくう様に手のひらに乗せる。
 ちび美琴はその手のひらの上でちょこんと正座している。
 美琴とちび美琴は二人とも俯いてあうあうしていたが、その時本の上に何か見覚えのあるツンツン頭の少年が出てきた。

『ふんふんふんふん~♪』
「わっわっわっわっ!!! あ、ああああの馬鹿ことこの馬鹿が出た!! どっどどどどうしよう!!!」
『おっおおおおおお落ち着いて私!! と、ととととりあえず私を降ろして!!!』
「わっ、わかった!」

 美琴はちび美琴を本に降ろすと、何故か今度はちび黒子の時のように文字に吸い込まれてはいかなかった。
 どうやら光っている文字に触れないと戻らないらしい。
 ちび黒子の時は本の上に置いた際に触れてしまったのだろう。
 そしてツンツン頭、上条当麻みたいな小さな少年はちび美琴がいきなり目の前に現れたので壮大に驚いたのか激しく動揺し始めた。

『う、うわああああああああああっ!!??? み、みみみ御坂さんっ!? な、何だ何だよ何ですかァ!? いつからそこにィィィィ!?』
『あっ…あああアンタ! 何で電話に出ないのよ! メールも沢山送ったのに返してくれないし!』
『電話? …あー、すまんすまん。朝起きたら電池切れててさ、今日は家に置いてきてるんだよ』
『そ、そうなの? そ、それならいいけど…。携帯の料金ただなんだから私が電話したら出て、メールが送ったら返してよねっ!!!』
『あのなー。いくらただだからって買い物でどっち買うか迷った時にいちいちメールで画像送ってくるなよ。
 俺が選んでも結局決めきれなくて両方買って来るみたいだし』
『い、いいじゃないそんなの! あ、ああアンタの意見が聞きたいんだから!!!』
『はぁ? なんだってそんな事…』
『だっ、だって…』
『…ん? どうした御坂? 顔赤くないか? 風邪でもひいたか?』
『うぅ…、ぁぅ』
「イライライライライライライライラ…」

 ちび上条とちび美琴のやりとりを見た美琴はイライラを隠せなく、言葉にイライラと出てしまう程だった。
 それは何故か。理由はちび黒子の時と同じようにちび美琴からも赤いハートがぽわぽわと出ていたから。
 しかしちび上条はそのハートに気付くことなく平然としている。
 ちび美琴はそのハートを誘導ミサイルの如くちび上条に向けて発射させるが、ちび上条にはジャミングがかけられてるかのようにスカスカと当たらない。
 美琴はそのハートの当たらなさっぷりに見るに見かねてちび上条を思い切り握りこんだ。

「ア・ン・タ・わーーーーーーっ!!! そこまでして私からの愛を受け取れないってかぁああああああああああっ!!!????」
『うっうわあああああああああ!!??? こ、ここ今度は何だ!? って御坂!? なっ何でいきなりそんなでかくっ!?』
「んなこたぁどうだっていいのよ! アンタね! ちょっとくらい私を女の子として見てくれたっていいんじゃないの!?」
『なっ、何を…言って…く、くるし……』
「私にそんなに魅力がないか! そんなに巨乳が好きか!? そんなにお姉さんが好きかぁああああああっ!!????」
『お、落ち…着いて、み、みさ…御坂……、さん』
「大体ちょっと考えたら分かるでしょうがぁっ!!! 嫌ってる奴と恋人契約なんかするかぁあああっ!! 好意見え見えでしょっ!!!」
『ちょ…、ま…、………って』
「あ」

 美琴はちび上条を握りこむと前後にガクガクと激しく揺する。
 ちび上条はその圧力と振動に意識が飛んでしまいピクピクとしてしまった。
 そんな上条を見た美琴は動揺してオロオロとしだす。

「あ、ああ…ど、どうしよう! えっとえっと…」
『こら私! はやくその馬鹿をここに置きなさい!』
「へっ!? あ…うん。わ、わかった!」

 美琴はちび美琴に言われた通り本の上にちび上条を戻すと、その上条にトテテと正に文字が出てちび美琴が近づいていった。
 ちび上条からは白いふわふわした何かが出ているが、ちび美琴はその上条の頭を持ち上げると自分の膝の上に乗せて上条の頭を優しく撫で始めた。
 自分もした事がある膝枕だ。今思うとあのツンツンの髪がチクチクしてくすぐったかった。

「なっ…!」
『えへ、やっ…やっぱりここは私が看病しないとダメよね。げ、げげ原因は…わ、私……だし?』

 ちび上条とちび美琴の空間はそこだけ何かピンク色になり、ちび美琴からはこれでもかというくらい真っ赤なハートがぽわぽわ出ている。
 ちび美琴は恥ずかしそうにしながらも幸せそうな顔をして上条の頭や頬を撫でている。
 美琴はそのちび美琴の表情を見ると、この子は本当にこいつの事が好きなんだなと思った。

「(あ。てゆうかコレ私じゃん)」

 美琴はそう思うと途端に顔を真っ赤にし、俯いてモジモジしだす。
 視線はちらっちらと本の上の二人を見るが恥ずかしすぎて見てられなくなり、すぐに視線を外すが気になってまた見る…の繰り返し。
 するとちび美琴は何を思ったのか急にキョロキョロしだし、ちび上条の顔に自分の顔を近づけていった。
 ちび美琴の顔は依然真っ赤で、目は何故かトロンとしていた。
 
「(え? こ、この私は今から何をしようとしてるの…? 段々顔が近くなっていくけど…え? えぇ!?)」

 美琴はいきなりのちび美琴の行動に動揺を隠せなくなっているが、そんな中ちび美琴はちび上条の頬に優しくキスをした。

「なっ、なにをしてんだ私ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!?????」
『うっうわっ!? い、いきなり大きな声出さないでよ! ビックリするじゃない!!』
「あ、あああアンタ今そいつになにしたか分かってんの!?」
『…へ? 今? 今私何かやったっけ…?』
「あ、アンタ無意識のうちにやっちまったのかぁ!!! あ、アンタはねぇ! 今そいつのほっぺたにキッ、キキ…キスしたのよっ!!!」
『キッ、キスぅぅぅぅ!!??? わ、私がこいつにぃいいい!!?? う、嘘よそんなの!!!!』
「嘘なんかつくかぁああああ!!!! アンタは何を思ったか急にキョロキョロしだして、うっとりした表情でキスしたんじゃああああっ!!!」
『う、うそ…ど、どうしようどうしよう…、ふぁ、ファーストキスはロマンチックにって思ってたのに…』
「だっ大丈夫よ。ファーストキスは唇同士なんだから今のはノーカウント! 挨拶みたいなものだわ!」
『そっ、そうよね! 挨拶よね! あははは』
「そうよ挨拶よ! あはは」
『ははは…はぁ』
「……アンタ本当にこいつの事が好きなのね」
『…うん。私はこいつが大好き…。でもコイツは全然私の気持ちに気付いてくれないし…』
「連絡なしに勝手に海外に行って死にかけるし…」
『見境なしに人助けして、その度に女の子に惚れられるし…』
「でも、そんなところがいいのよね。うまく言えないけど…」
『うん…。私はそんなの全部含めてコイツが大好きなの、えへへ』
「わっ私も。そんなアイツが大好きなんだ。えへ、えへへ」

 美琴とちび美琴はそう言うとお互いに顔を見合って笑いあった。
 自分の本心を全て吐き出したのでどこかスッキリした顔になっているのが分かる。
 きっと相手から見てもそれを感じることが出来るだろう。
 すると美琴は本の上のある変化に気付いた。
 ちび美琴から出る赤いハートがちび上条の胸に入っていくのだ。
 どうやらちび美琴からはそのハートが見えないらしく、笑い合った後また上条に視線を落として優しくツンツンの髪を弄っているが、
 ちび美琴から出てる真っ赤なハートは上条にどんどんと吸い込まれていった。
 心無しかちび上条の頬が赤い気がする。
 ま、まさか―――

「ねぇちょっと…コイツもしかして気付いてるんじゃないの?」
『ふぇ!? う、うそ!?』
「あ! 今こいつから『ドキッ』って文字が出た! 絶対気付いてるわコイツ!」
『アンタ本当に起きてるの? あと五秒以内に起きたら電撃は勘弁してあげるわ。4、3、2…』
『うっ! うぅーーーーん! あ、あれ? 俺気絶してたのか!? あは、あはは!!!』
『アンタどこから気付いてたのよ?』
『な、何を言いますか御坂さん。上条さんは今、まさに今さっき目を覚ましたのですよ?』
「……正直に言えばこの超電磁砲は撃たなくて済むわ」
『でかっ!? コインでかっ! てか素がでかい!』
『そっちを防いだとしてもこっちの超電磁砲もあるわよ?』
『あ…あぁ。に、逃げ場が無い……、不幸だ』
「で? アンタはいつから気付いてたのよ?」
『え、えっと…あの。お、怒らないでせう?』
『うん』
『じゃ、じゃあ言いますけど…、その…
 「嘘なんかつくかぁああああ!!! アンタは何を思ったか急にキョロキョロしだして、うっとりした表情でキスしたんじゃああああっ!!!」ってところから…ですね、はい』
「…」
『…』
「…私だあああああああっ!!!!!」
『あ、アンタねぇ! やっぱりあの大声で起きちゃってたんじゃない!』
「だってだって…いきなりあんな事するから…」
『じゃあ…その、その後の会話も聞いてたって事…?』
『……あぁ。聞いた』
『そう…』
「あ、あの…ご、ごめん。私のせいで」
『ん? いいわよ別に。いつかは言おうとしてたし。何かスッキリしたわ』
「そ、そう…なんだ」
『で? あ、アンタはどうなのよ?』
『へ? ど、どう…とは?』
『アンタ鈍感にもほどがあるでしょうが! この状況でどうって私の事どう思ってるかって事に決まってるでしょ!?』
『えっと…その、あぅ…』
『私はさっき聞いたかもしれないけど、アンタが大好き。全部。全部大好きなの』
『み、御坂…』
「あれ…?」

 美琴は見た。
 ちび美琴から告白された時に、ちび上条からハートが出た事に。
 それはちび美琴ほど大きなハートでは無かったが、しっかりと形を成しふわふわとちび美琴に吸い込まれていった。
 それをちび美琴は気付かないが、美琴は何故かとても嬉しくなった。 
 その光景を見た美琴はこれ以上この二人の邪魔をするのは野暮かなと思い、ちび美琴を出した文字に触れると本の上の二人は吸い込まれていった。
 辺りは一気に静けさを取り戻し、自販機の冷却音だけが聞こえてくる。
 美琴は本を閉じて元あった場所に立てかけると、自販機の上に置いていたヤシの実サイダーを手に取り、一口飲んだ。
 そしてまた自販機の上に缶を戻すと背伸びをする。
 結構な時間座り込んでいたせいか背中がちょっと痛いし、足が痺れている。
 美琴はその後小さく溜息を吐くと何かを感じた。
 後ろに…、誰かいる。
 美琴は恐る恐る振り返るとそこには―――

「よ。やっと気付いたか。何かおもしろい事やってたな」
「あ」

 等身大の上条当麻が立っていた。
 先程の本の上にいた上条は少しデフォルメされた感じだったが、この上条は今日まで美琴が見てきた本物の上条当麻だ。
 今日は休日なのだが何故か学生服姿で、頬を染めて頭をぽりぽりと掻いていた。

「あああアンタ! いつからそこにいたのよ!?」
「ん? 今さっきだよ。超電磁砲がどーとかってところから。うずくまってるから何してんのかと思ったけど」
「そ、そうなんだ」
「と言いますかさっきのって俺とおまえ…なの? やたらハート出てたけど」
「う、うん…。多分…てゆうかあれは絶対私達だった」
「超能力か何かか? でも何つーか面白い能力だな」
「うん。何で本の中にいるのかは分からないけど…」
「さっきの二人いい感じだったしな。よく出来てる人形劇っぽくてさ」
「うぅん。この本の中の世界は本物よ。私の性格とか考えてる事まで全部一緒だったもん」
「マジで!? すげーなそりゃ。…って、ん? 一緒?」
「そ、そうよ。私もあのちっこい私もやりたい事が一緒なの」
「え、えっと…御坂さん? それは…、その、つまり…」
「私…アンタが大好き。ずっと、ずっと好きだったの。あのちっこい私も言ってたけど、いつか言おうと思ってた」
「御坂…」
「ねぇ。アンタは私の事どう思ってるの? 聞かせて。アンタの気持ち…」
「えっと…、その。うん…、正直言ってビックリしたってのが一番かな。でも…それ以上に普通に嬉しい」
「え!? じゃ、じゃあさ…」
「まっ待った! その…、今非常に上条さんは混乱してまして…だっ、だからちょっと言葉を選ぶ時間が欲しいといいますか」
「そっそんなの…必要無いじゃない。好きか………き、らいかで…」
「そ、そうか。じゃあその…好き」
「ホントに!?」
「……かも」
「…アンタね! この状況で乙女心を弄ぶとはいい根性してるじゃない!! 死ぬ覚悟出来た!?」
「ちょっと待て! だ、だから…その、何て言うか…」
「なによ。アンタらしくないわね。はっきり言いなさいよハッキリ!」
「その…さっきまでは友達として見てたけど、なんて言うか今の御坂見てると…、その…可愛くて」
「か、かわっ……!」
「好きに、なっちまった…かも? って言いたかったわけです。はい」
「じゃあ…付き合って、くれるの?」
「御坂が、こんなんでいいならだけど…。でも本当に俺? 俺おまえに何か好かれる事やったっけ?」
「うん…。一生に一度の恋をさせてくれた」
「ちょっ、御坂さん…。さっきから台詞がストレートすぎて、上条さんのひ弱な心臓が張り裂けんばかりに高鳴っているんですが…」
「えへへ。いいの。アンタが自分の好意に気付いてないなら、気付けるくらい私の事好きにさせてあげる♪ だからいっぱい好きになってね♪」
「で、では御坂さんに…これを」
「え?」

 上条は左手で自分の周りの空間をすくうと、美琴に差し出した。
 その手の上には何も見えないが、先程の本で起きていた事を見ていた二人ならそれがどういう意味か分かる。
 つまり上条は、自分から出た赤いハートを美琴にあげようとしているのだ。
 美琴は上条の手にゆっくりと両手を持っていくと、ガラス細工を扱うように優しく受け取り自分の胸にしまった。
 そしてその瞬間、美琴は何とも言えない気持ちになる。
 上条の優しさや温かさが体全体を包んでくれているようだ。
 上条も美琴のその姿を見て恥ずかしそうに顔を染め、頭をぽりぽりと掻いている。

「さっきの二人見てたらさ。今の俺も確実に出てるなと思って」
「ありがとう。アンタの想い、確かに受け取ったわ」
「まだまだおまえ程じゃないみたいだけどな」
「そんなの当たり前よ。私のアンタに対する愛はこの上ないものなの。これを上回る事が出来るのは私だけよ」
「そ、そうなんですか。では、なるべく近づけるように努力します」
「えへへ。期待してるね!」
「えっと…じゃあ。不束者ではありますが、どうぞ宜しく、お願いします」
「うん! よろしくね!」

 そう言うと美琴は上条の腰に手を回し抱きついてきた。
 美琴は上条の胸に幸せそうに頬擦りすると、心の中で白井に何かを感じて同時に謝った。ごめん黒子。アンタの気持ちが分かる気がするわ。
 上条はいきなりの美琴の甘えっぷりに驚きオロオロしだすが、美琴から「えへへ」と聞こえてきたので引き離す事なく頭を撫でてあげた。
 しばらくすると美琴は上条の胸から離れ、腕を絡める。
 まだまだ甘え足りない表情をしていたが、すぐに「じゃあ初デートに行きましょ!」と言い笑顔になった。

「まずゲーセンでプリクラ撮るでしょ? そしたらセブンスミストで買い物して…、それからそれから」
「えっと…その事なんですが、実は上条さん今日課題を貰ってきてしまってですね」
「はぁ!? アンタね。休みの日に補習受けてその上に課題まで出されるとか、どんだけなのよホントに…」
「いやね。上条さんの頭の悪さでも本来なら補習だけで済むんですよ。しかしですね出席日数が足りてないからって」
「それはアンタが学校さぼって海外飛び回ってるからでしょうが!」
「うぅ…そ、そうなんですが」
「まぁいいわ。さっきも言ったけど、私はアンタのそういう所も含めて全部好きなの。だからプリクラだけ撮ったら課題見てあげるわよ」
「御坂さん…女神ですか」
「えへへ。明日から暇な日は無くなりそうね♪」
「上条さんなりに頑張ります」
「ふふん。じゃあ行くわよ! って…この本どうしようか」
「ん? このままでいいんじゃないか? 元からここにあったんだろ?」
「うん。…ねぇ? あの二人はどうなったのかな?」
「わかんねぇけど…、でも、一緒の気持ちならあの二人も今頃こんな感じになってんじゃねぇかな」
「えへへ。そうだといいね♪」

 美琴はそう言うと、笑顔で上条の腕を引いてゲームセンターへ向け歩いていった。
 美琴は今まで想いを寄せていた大好きな上条当麻との初デートに、気持ちが抑えきれずに周りを気にせずはしゃいでおり、
 上条は今さっき生まれた御坂美琴への恋心が激しく膨らみ始め、恥ずかしそうだが満更でもないようだ。
 そして二人が去った後、自販機前に安全ピンで留めている白い修道服を着た少女が現れる。
 その少女は自販機に立てかけてある本を手に取ると溜息を吐いた。

「はぁ…やっぱりここにあったんだよ。ここしか考えられなかったけどあって安心したかも。…って、もうこんな時間なんだよ!
 そろそろとーまが帰ってくるから早く帰らなきゃ!」 
『ほら! 早くゲーセン行こうよ! 課題が終わらなくなるわよ!』
『そ、そんな引っ張るなよ御坂…』
「あれ? とーまと…、短髪の声? ……ま、いっか。ごはん♪ ごはん~♪」
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