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 とある日の深夜。学園都市第七学区のとあるファミレスにて群れている不良達たちがいた。
 角にある大人数のファミリー席を6,7人が陣取りながら話し込んでいる。
 その内容とは、今テレビで人気になっている女優や歌手の話ではなく、面白いドラマや学校であったムカつく話でもない。
 見ると全員が全員まだ息が切れきれで、2,3人は頭を擦っている奴さえいる。
 そんな彼等の話のネタは――

「だぁーっ! くそっ! また逃げられたぜ! あのツンツン頭の逃げ足大王によぉ!!」
「はぁ…、はぁ…、あ、あいつを追いかけるのもう止めにしねぇか? あの逃げっぷりは常人の遥か上を行ってるぜ」
「おいおい待てよ。せっかく今日は可愛い子ちゃんとよろしく出来るチャンスだったんだぜ?」
「だな。でもあの大王が割り込んだせいで結局女には逃げられるは、大王も逃がすはで…、やってらんねぇよ」
「はぁ、んで。その大王なんだがよ?」
「な、なんだ? まさか見つけたのか!?」
「いや、違ぇ。ネットで流れてる噂なんだが、どうやらその大王に手下がいるらしいんだわ」
「て、手下ぁ!? つーと大王はどっかのグループの頭って事になんのかよ?」
「にしては逃げ腰だな。まぁ一対七じゃ逃げたくなる気も分からないわけじゃねぇけど…」
「でも女を助けるとか正直かっけぇな。女からしたら不良から救ってくれた王子様になるわけだからよ」
「…」
「…」
「…」
「…羨ましい」
「で、でだ! その大王の部下ってどんな奴なんだよ?」
「まず一人目は常盤台の超電磁砲」
「ぶぅぅぅぅぅ!!! オイオイッ! 一人目からぶっ飛んでんじゃねぇかよ! 第三位が手下とか大王どんだけだよ!?」
「しかもその超電磁砲、超可愛いらしいぞ」
「…」
「…」
「…」
「…羨ましい」
「で二人目は瞬間移動の美少女。他にも太刀を持った美女に、槍を持った美女、他にも一万人くらいのいる組織らしいぜ」
「おいおいちょっと待てよ! 何でそんな美女ばっかりなんだよ! 何か嘘臭くねぇか!?」
「てか一万!? 学園都市内部に一万の組員!? こ、これは手ぇ出したら確実に殺られるんじゃねぇの!?」
「いや待て。もしかすると今日みたいな事を繰り返し繰り返ししているうちに女から好かれて仲間になっていくとかじゃねぇのか!?」
「も、もしそうなら俺らが組織拡大に貢献してるって事だよな?」
「そ、そうだな…」

 不良達は同時に「はぁ…」と溜息を吐くと、ウエイトレスが持ってきた水に口をつけ一息入れる。
 さっきまでツンツン頭の逃げ足大王を追いかけて走り回っていたのでとてもうまかった。
 不良達はまだ同時に「はぁ…」と溜息と吐くと、走り回って体力を使ったのか、お腹がぐぅと鳴り、食事を取ることにした。
 不良と言ってもまだ学生でお金はあまり持ち合わせていないらしく、クーポンある? とか、こっちの方が安くて多いなとか話し合っていた。

「あー、彼女欲しいなぁー」
「なんだよ急に」
「おまえら欲しくないの? 花の学生生活に女は付きもんじゃねぇ?」
「女ねぇ…、まぁいたらいたで面倒そうだけどな」
「つか俺ら彼女欲しくてナンパしてるんじゃなかったっけ?」
「あ? そ、そういやそうだな」
「……ちょっと待て」
「あ? なんだよ?」
「俺らは彼女が欲しい」
「あぁ」
「で、ナンパをする」
「するね」
「で、大王が邪魔をする」
「…するな」
「で、大王の組織がまた大きくなる…の無限ループになってねぇか!?」
「…」
「…」
「「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!???????」」」」」」
「た、確かに言われてみればそうだな!」
「だろ!? 俺等が彼女を欲すれば欲するほど大王の組織拡大に一役かってんだよ!」
「じゃ、じゃあよ! 俺等が彼女をゲットするには…、どうすりゃいいんだ?」
「大王をとっ捕まえたところで後々一万の組員が押しかけてくるし…」
「捕まえるといっても、何でも大王には超電磁砲が側近として付いてるらしいぜ?」
「はぁ!? くそっ! 大王の野郎ぉ! 美女ばっかの組織の上、美少女を側に使わすとはっ!!!」
「こ、これじゃもう打つ手ねぇじゃねぇかよ…、どうすんだ?」
「…」
「…」
「…」
「……俺に、いい考えがある」
「え?」

 そう言い出したのは今までただの一言も話さなかったスキンヘッドの男だ。ダボダボのパンツに大きめのパーカー姿のがっちりした男。
 仲間内からはその男は哲と呼ばれ、寡黙だがやる時はやる男だし、とても情深い奴として人気がある。
 哲は、話の途中で運ばれてきたハンバーグステーキを一口サイズに切ると、猫舌なのか十回程ふーふーして口に運んだ。
 口の中に広がる肉汁を感じつつライスを一緒にかっ込む。
 そして哲は「うめぇ…」と言うと、他の男達に目を向けた。

「要するに、俺等も同じ事をすればいいだけだ」
「は? 同じ事? なんだよ、哲。同じ事って」
「いつも大王がしている事だ。俺らはナンパ側だったが、今度はナンパを止める側に回ればいい」
「な、なるほど! さすが哲だぜ! さすがにナンパを止めてる奴には大王も何も言ってこねぇだろうしな!」
「そんでもって大王の組織も拡大する事なく!」
「助けた美少女が俺らの為に色々とやってくれるってわけだな!!!」
「ふっ…、そういうこった。何故今まで気付かなかったのかと自分を殴りたくなるぜ」
「よっしゃ! じゃ、じゃあ早速明日から作戦開始と行こうぜ!」
「だな! もう夜遅いし早く帰らないと明日の作戦に支障をきたす!」
「じゃあ時間と場所は明日学校で決めようぜ!」
「ああ! よっしゃー! 何か燃えてきたーっ!!!」

 こうして不良達は明日への希望へと走っていくのであった。


 そんな事があった翌日。その不良達の話題とされていたツンツン頭の逃げ足大王こと上条当麻は、眠気眼を擦り登校していた。
 昨日深夜近くまで追いまわされてたせいか、足取りは重く、フラフラと欠伸をしながら歩いている。
 上条当麻はどこにでもいるごく普通の高校生で、ちょっと不思議な力があるが、別に手から電気が出るわけでもなく、太刀や槍を持っている
 わけでも無く、瞬間移動できるわけでもなかった。増してや一万の組員の頭なんか最初からやっていない。
 昨日不良達が言っていたのはあくまでも噂で、上条は今日もなんにもないちょっと不幸な一日を送っているだけだった。
 まぁ噂が全部嘘と言ったらそうでもなく、確かに上条の周りにはちょっと過激な美女がいるし、考えようによっては一万の組員がいる。
 それはあくまで考えようなのだが、その噂で確実な事が一つあった。それは―――

「おっそい! まったく毎日毎日! どれだけ待たせれば気が済むのよ、当麻はっ!」

 そう言って顔を膨らませているのは常盤台の超電磁砲こと御坂美琴。
 彼女は今や上条当麻の恋人であり、登下校を共にして休日には上条とデートなどと学生生活をエンジョイしていた。
 つまりはあの噂の大王の側近が超電磁砲と言うのは強ち間違ってはいない。恋人として常に隣にいるのだから。
 上条は美琴の目の前までフラフラと歩いて行くと、力尽きたようにぽふっと美琴の体に倒れ掛かった。

「なっ…、ちょっちょちょちょ! そ、その…あの…あわわ」
「すみません美琴さんー…、上条さん昨日あまり寝てなくてー…ぐぅ」
「ど、どうしたの? 何かあったの?」
「ちょっと…、過激なお兄さん達に追いかけられてたんですよー」
「追いかけられてた? …アンタまさか、また不良達から女の子庇ってたんじゃないでしょうね?」
「ん? ……そうです、けど」
「あ、アンタね! 庇うのが悪い事とは言わないけど、追いかけられたら私に連絡してよ! 一瞬で終わらせてあげるから!」
「あのですねー、お兄さん達にも命というものがあって…」
「そ・れ・で・も! 当麻に何かあったら、私…」
「ははは、大丈夫ですってー、逃げ足には自信があるんですからー」
「それは嫌ってほど知ってるけど…、あまり無理しないでね?」
「おうよ。優しいなー、美琴さんはー」
「あ…」

 上条は美琴から離れ、美琴の頭を優しく撫でる。
 美琴からすれば大好きな上条に頭を撫でられた上に、笑顔を見せられたのでこの上なく幸せな気分になり、先程まで沈んでいた表情を一気に赤く染め上げた。
 目はトロンと座ってしまい、体を子猫のように一回り小さくさせた。
 上条も美琴の頭が撫でやすいのか笑顔で撫で続けていると、その笑顔につられて美琴も笑顔になる。

「えへへ」
「でも待たせて悪かったな。ごめん」
「い、いいよ。当麻が無事なら…、そ、それに…、頭撫でてもらったし…」
「うんうん。素直な美琴ちゃんも可愛いですな」
「ふにゅ…」
「じゃあそろそろ行きますか。途中までだけどさ」
「う、うん。…あ、ちょっと待って、当麻」
「ん?」
「ほら…、ボタンの穴ずれてるよ。しっかりしてよね」
「あー、寝ぼけてたもんで…。すみませんねぇ、美琴さん…」
「ま、まったくもう! 当麻は私がいないとダメなんだから! ほら、もういいわよ」
「ありがとな。じゃあお詫びに――」
「へっ!?」

 上条は美琴の右頬に手を添えると、鼻の頭に優しくキスをした。
 美琴は上条と付き合うようになって気付いた癖をいうか、習慣みたいのを見抜いており、上条がキスをする時には決まって自分の左頬に手を添えてくるのだ。
 もちろん今回も例外では無いだろうと思った美琴は、いきなりのキスに頭からポンっと湯気を出すが、慣れもあってか漏電はしない。 
 まぁ漏電がないだけで、上条からのキスはいつだって美琴の心をときめかせる事に変わりはないのだが。
 そんな事があった美琴は、頭を撫でてもらった時に真っ赤にした顔をさらに染め上げ、かするような小さな声で俯きながら上条に言う。

「と、当麻…こんな所で恥ずかしいよ……」
「嫌だったの?」
「い、嫌じゃない…けど」
「美琴さんが可愛くて、上条さん我慢出来なかったんですよー」
「うぅ…」
「はは、ほら。早く行かないとホントに遅刻するぞ」
「あ! ま、待ってよ!」

 美琴は上条に走り寄ると、腕を絡めて歩きだした。
 上条はこっちの方が恥ずかしい気がすると思ったが、美琴が楽しそうにしていたのでそのまま登校する事にした。
 ここ学園都市は学生が大多数を占める街であるためカップルも学生しか見ないと言っても過言ではないが、常盤台の制服を身に纏っている女の子を連れて
 歩くのは上条としては幸せな事だが不幸な事でもあった。
 上条が通っている高校と美琴が通っている常盤台中学の丁度分かれ道、二人はここでいつも放課後どこで落ち合うか話し合う。
 今日は上条の補習もないし、昨日のうちに特売品を買い占めたので食材の心配もしなくていい。
 そう言って二人は今日はファミレスでも行ってゆっくり過ごそうって事で別れた。
 美琴は今日の放課後が待ちきれないのか足取り軽く走って行き、その後ろ姿を見送った上条は、たまたま近くにいた土御門と青ピにボコボコにされた。


 そして放課後。
 昨日の深夜に彼女ゲットと意志高らかに掲げた不良達は、昨日と一緒のファミレスに入り獲物を待っていた。
 普段の彼等ならこの獲物は女子中高生なのだが、今日はそうではなく、その中高生を狙うナンパを獲物として待っているのだ。
 ファミリー席を陣取り、仕切りの隙間や影から今か今かと周囲に視線を向ける。
 現在店内に客足は少なく、いても男子やカップル達ばっかりだった。
 不良達は、つまらなそうにドリンクバー用のコップを持つとズズッと一気にジュースを飲み込み溜息を吐く。
 するとそんな中カランカランという鈴の音が鳴り響き、入り口のドアが開いた。

「ん? お、おい見ろよ! 女だ! しかも一人!」
「おぉぉぉ!!! しかも可愛いじゃねぇか!」
「くぅぅぅ! お近づきになりてぇ…! はぁ…はぁ…」
「お、落ち着けお前ら! ここで出て行ったら計画が水の泡だぞ!」
「あ、あぁ…」

 そんな彼等の注目の的になってる女の子は、店員に「いらっしゃいませー」と招かれ、テーブルに着いた。
 店内は空いていたため待ち時間は無く、水を持ってきた店員に何やら注文したのかメニューは受け取らなかった。
 女の子は長い黒髪にセーラー服姿で、その胸元には女性の象徴とも言える膨らみが自分を主張しているようにセーラー服を盛り上げている。
 年はハッキリとは分からないが、中学にあがったばかりか高校生には見えない幼い顔立ちをしており、その少女は鞄からノートを
 取り出すとカリカリとペンと走らせていった。

「…いい子ちゃんじゃねぇか」
「…」
「て、哲ちょっと落ち着け。スキンで凝視はかなり怖い」
「つかまだかよナンパは? あんな可愛い子俺だったら席に座った瞬間に声かけるぜ」
「ん? いやちょっと待て! 何か近づいていってるぞ! いかにもガラ悪そうだ!」
「おおおおおお! ほんとだ! しかも一人! へっへっへっ! さあ、早くいけっ! そこだ! 声かけろっ!」
「…」
「て、哲すまん。さっきのは謝る」

 そんな彼等の願いが通じたのか、そのガラの悪い男は黒髪の少女の向かいに座り、何やら話し込んでるようだ。
 しかしこれだけだとただ単に彼氏という可能性もあるわけだが、どうやら少女は嫌がってるらしく「やめてくださいっ!」という言葉も聞こえてきた。
 その言葉を聞いて彼等は立ち上がる。来たぜ…ぬるりと……。

「おい。おまえ」
「あぁ? 何だおめーら?」
「彼女嫌がってんだろ? 離してやんなよ」
「はぁ? 何? 俺の邪魔しようっての? 上等じゃねぇかよ」
「ははは。おまえ馬鹿なの? 見て分からない? 俺等七人。おまえ一人。ぶち殺し確定じゃん?」
「馬鹿はおめーらだよ。後ろ見てみな」
「はっ! そんな事言ってその隙に逃げ出そうと―――」

 何やら人の気配を感じ後ろを振り返ると、そこには自分達よりもがたいがいい青年達が十人くらいいて睨みを効かせている。
 指の骨をポキポキッと鳴らす奴もいれば顔中傷だらけの奴もいるし、何が面白いのかヘラヘラ笑ってる奴さえもいる。

「――してるんじゃ? ないですよね。はい」
「逃げないからよ。ちょーっと面かせや。うん?」

 そんな青年達を見て、哲たちは一瞬にして顔を真っ青にした。



「痛ててて…、まだあちこち痛ぇ…。不幸だ…」

 上条当麻は朝の美琴とのラブラブ登校を土御門達に見つかりまずその場でボコボコにされ、それでも収まらないのかクラスで常盤台の女の子と
 いちゃいちゃしながら登校して来たと言いふらし、嫉妬の念を持った男子生徒と、絶望に追いやられた女子生徒に追い回されて現在に至っている。
 毎日不良やクラスメイトに追い回されている上条にとっては、大人数を撒くのはもはや慣れてしまっており、放課後もそんなクラスメイトから
 難なく逃れる事が出来た。

「さて、美琴はもう来てるかな…って。ん? なんだあいつら?」

 上条が見るその先には人だかりが出来ていて、その集団はいかにも怪しい感じでファミレスの前にたまっていた。
 その道を通る他の学生は目を合わせないし、ちょっとでも目が合うと二人三人と迫られる。
 その集団の足元には倒れてる人影が見え、男の一人が黒髪の少女を押さえつけてるように見える。
 上条当麻の特性として不幸に会う条件がどんどんと立っていくが、見てみぬ振りも出来ない彼は今や記憶にないあの方法で脱出を図る。

「いや~、こんな所にいたのか。探したぞ? あ、どうもどうも。連れがお世話になりました~」
 
 そう言って上条は爽やかに女の子の手を取ると足早にその場を後にしようと思ったが、倒れている男達を見て足と止めた。
 見れば倒れている男達は昨日深夜まで自分の事を追い回した連中で、何やら腹を抱えてうずくまっている。
 もちろんそんな状態にしたのは青年達で、その集団の中に単身乗り込んだ上条の不幸数値は極限まで跳ね上がっていった。

「何だてめぇは? こいつらのダチか?」
「え? いや、そういうわけじゃ…」
「じゃあ何だっつーんだ? あぁ!?」
「なめてんのか? コラ?」
「…不幸だ」
「あぁ? 何だって?」

 上条は逃げるに逃げれなくなったためはぁっと溜息を吐き、この先に起こるであろう不幸を嘆いた。
 しかしまぁこのままでいるわけにもいかないので「仕方ねぇ」と一言言って女の子を後ろに隠し、一歩前に出て言い放つ。

「あぁそうだよ。恥ずかしくないのかお前ら。こんな大勢で女の子一人囲んでなっさけねぇ!」

 その一言を受けて青年達は目を見開き、少女にいたっては口をぽかーんと開けていた。


 そんなファミレス前から時間と場所を変えて、こちらは御坂美琴。
 時は少し遡り美琴は走っていた。
 美琴は学校が終わったらすぐにでも上条の待つファミレスへ行くつもりだったが、放課後同じ学校の一年生に相談に乗って欲しいと言われたので、
 教室でその少女の話を聞くことにした。
 相談事を言うのは、美琴自身の能力でもある発電のことで彼女もその系統のレベル3のようだ。
 大能力者や超能力者なら誰もが経験するであろうレベル3から4への壁は飛び越えるのはあまりにも高く、その少女もその事で悩んでいた。
 御坂美琴はレベル1から5まで上り詰めた事で有名であり、発電能力としてその頂点に君臨する美琴に相談に来たというわけだ。
 美琴はその少女の話を聞き、自分が今までやってきた事を話したが、その事に少女は大変驚いた。
 それはそんな血の滲むような事をしてきたのかとかそういう事ではなくて、自分は変に焦りすぎて自分を見失っていたという事だった。
 美琴は満足のいくアドバイスじゃないかもしれないけどと言ったが、少女には全然そんな事は無く、笑顔でお礼を言って帰っていった。
 
 そしてそんな事があってか、美琴はファミレスに行く時間が遅くなり現在絶賛全速力中なのだ。
 美琴も上条の事をその昔夜通し追い掛け回していたので足の速さと体力には自信がある。

「遅れちゃった遅れちゃった遅れちゃったーーー! 待っててね当麻っ! 今行くからねっ! えへ、えへへ」

 まぁ何と言うか色々切羽詰っている美琴なのだが、そんな心境を変える出来事が目の前で起きていた。
 それは遠くからでも分かる上条当麻の特徴でもあるツンツン頭が何やら集団の中に割って入って行ったこと。
 美琴はツンツンが目に入った瞬間に胸を高鳴らせたが、その後の事から、また上条は女の子を守りに行ったのだと直感的に感じる。
 昨日の夜もそれで追い掛け回されていたらしいし、どうしてそんなに無茶をするのかと美琴は思う。
 しかし怒りはしない。そんな上条当麻を自分は好きになったのだから。
 美琴がそんな事を考えてその集団に近づくと、案の定上条は女の子の盾になっており、周囲の男達からその少女を守っていた。
 ココだけの話だが、その時の美琴ビジョンでその女の子が頬を染めてるように見えたのはきっと幻覚だろう。
 そして現在に至り上条が青年達に向かって言い放つ。

「あぁそうだよ。恥ずかしくないのかお前ら。こんな大勢で女の子一人囲んでなっさけねぇ!」
「(はぁ…、アイツったらあんな事言ったらボコボコにされるのがオチじゃない…)」
「大体おまえら声をかけた相手を良く見てみろよ!?」
「(そうね。私の時もそうやって言っ―――)」
「…まぁお前らの目に狂いがないのは認める! でもこんな美少女でも大勢で寄ってたかって迫ってくるってのはどうなんだよ!」
「なんでじゃコラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!?????」

 美琴は上条の言葉に我を忘れ、彼女である事を忘れ、数億ボルトの電撃を上条目掛けてぶっ放した。
 上条も最近美琴と一緒にいる事が多いせいか、空気中の僅かな電気の流れから電撃が飛んでくる事を察知し、その方向へと右手を差し出す。
 きっとその時だけ某パイロットのように頭のあたりに電気みたいのが走ったのだろう。
 周囲は一瞬だけ青白く光ると、その後静けさと取り戻し煙が舞い上がった。
 しばらくして煙が風に流せていくと上条は周りを見渡す。
 そこにはさっきまで対立していた青年達が全員その場に崩れ落ちており、ピクピクと痙攣している。
 上条はこれは絶対に美琴だと思って溜息を吐こうとするが、それよりも先にその本人である御坂美琴に制服の首元をがっしり掴まれてしまった。

「ア・ン・タ・はーーーーーーーーーーッ!!!! 何なの一体!? 私の時はガキだの態度が悪いだの反抗期だの言ってたくせにっ!!」
「み、みみみ美琴…やっぱりおまえか! てか、ちょっと落ち着いて…」
「うっさいうっさい! もう頭にきた! 最近は目の前でこういう事なかったから安心していたけど、やっぱりアンタはアンタなのに変わりはないみたいね!」
「な、何をわけのわからん事を言って…」
「可愛い女の子の前だと見境なく飛び出していくその性格を一度徹底的に調教してあげるって事よ!」
「あー…」

 どうやら美琴姫は相当ご立腹のようだ。
 その理由を記憶を失っている上条は知る由もないが、今やその美琴の彼氏をしている。
 こういう時が過去に無かったと言えばそんな事はなく、付き合って最初の頃には部屋にいるインデックスの件で一波乱あり、それが済んだと思ったら
 今度は太刀を持つ美女や二重瞼の美女と一波乱あり、やっとそれも収まったと思ったら妹達の件で大波乱があった。
 その波乱の原因は元を言ってしまえば上条なのだが、大体は美琴が上条と他の女の子が仲良くしているのが見てられなくて騒ぎを起こして
 いるというのが一番の原因なのである。
 そんな事を積み重ねていくうちに上条はそういう状態の美琴の扱いには慣れ、上条は美琴が喜ぶ頭なでなでをしてあげた。

「あ…」
「ったくおまえは。何をそんなに怒ってるのか知らないけど、そんなに荒くなるなって」
「だ、だって…と、当麻は今は私の彼氏なんだよ? そ、それなのに…、その…、他の女の子に目を向けるから…」
「あのな美琴よ。前にも言ったけどそんなに心配しなくったって上条さんは美琴さんにメロメロなんですってば」
「ホントに…?」
「ああ、ホントだ」
「じゃ、じゃあさ…ん!」
「え!? あ、いや…その、ここではちょっと…」
「なによー、やっぱり私とは出来ないって言うの!? そうなのね! そういう事なのね!? うぅ…」
「いやそういうわけじゃないけど…とりあえず周りを見てみようか?」
「ふぇ?」

 そう言われて美琴が周りを見渡すと、風紀委員の面々が揃っており、騒ぎを起こしていた青年達を捕まえてるところだった。
 もちろん美琴もその騒ぎの一員なのだが、一部始終見ていた人が風紀委員に言ってくれたらしく大事にならずに済んだ。
 美琴は上条とのやりとりを見られていた事に恥ずかしくなり、頭からボボボボと煙を出すと俯いてモジモジし始めた。
 そんな美琴を見た上条は、こういう状態になったらしばらくは帰ってこないなと思い、少女に安否の声をかける。

「えっと…、大丈夫か? 怪我とかないか?」
「は、はい! その…、助けていただいてありがとうございます!」
「礼なら俺じゃなくてそこのふにゃふにゃしてる奴と、あいつらに言ってくれ」
「へ?」

 上条が目で指す先には青年達から少女を守ろうとした男達がいて、フラフラになりながらも立ち上がっていた。

「理由は知らないけど、君の事庇ってくれたんだろ?」
「はい…」
「俺は結局何もやってないからさ。お礼を言うならあいつらに言ってくれ」
「は、はい」

 そう言って上条と少女は男達に近づいていった。
 その男達の顔は殴られたのか腫れており、鼻や口からは血が滲み出ており痛々しい有様だ。
 そんな状態の男達を見て上条は溜息を吐いた。

「おまえらな。勝てないと分かってる相手にはまず逃げようぜ。そんなボロボロじゃ助けられた方も心配で仕方ねぇよ」
「う、うっせんだよ大王がっ! 俺らはテメェみたいな腰抜けじゃねぇんだ! 大体女を守るのが男の役目だろうがっ!!」
「えっと…、昨日ナンパしてたのはどこの誰でしたっけ?」
「…うっせぇ! それを言うんじゃねぇよ!」
「でもよ、確かにそうだよな。今日のお前らは昨日と違ってかっこいいぜ」
「なっ…!」
「ほら、君も」
「は、はい。あ、ああああの! 助けてもらって…ありがとうございましたっ!!」
「……気にすんなよ」
「素直じゃねぇな。ひょっとして照れてます?」
「だああああああっ! うっせぇうっせぇ! おまえらもう行こうぜ! 今日は疲れちまったよ」

 男の言葉を受け、他の奴らものろのろとその場を後にした。哲だけは上条に対して深々とお辞儀をして行く。律儀なり。スキンの哲。
 上条はそんな男達の後姿を見送ると、風紀委員に少女を任せ美琴を連れてファミレスへ向かう。

「ほら美琴行くぞ。しっかり歩けよ?」
「ふにゃー」

 未だ美琴は帰ってこないらしい。


 夕日に染まる学園都市をバックに、川原の土手に腰掛ける七人の男達がいた。
 その男達の顔は夕日で真っ赤に染まっており、何やら昨日までの締りがない顔ではなく、引き締まった表情をしている。
 男達は沈んでいく太陽を見送っていたが、そんな中唐突に哲が話し始めた。

「大王が何で人助けをするのか、分かった気がするな」
「…あぁ」
「つかあんな馬鹿みてぇに強い電撃女を丸め込める所からすると大王も相当の力の持ち主だぞ」
「強い奴は馬鹿みてぇに突っかかっていかないって事か…」
「あぁ…、でもさ、何か嬉しかったよな。人から感謝されるのってさ」
「…」
「…」
「お前らホント素直じゃねぇのな」
「…はぁー、でもよ。結局彼女ゲットならずじゃねぇかよ。ここまで痛めつけられて」
「別にいいんじゃね? 今は何か晴れ晴れとした気分だぜ」
「…あぁ。そうだな」
「…」
「…さて、と」
「あ? 何だよ哲。もう帰んのか? 今日は駄弁らないの?」
「今日は疲れたから帰る。珍しくいい気分だしな」
「そっか。じゃあ俺も帰るかな」
「俺もー」

 そう言って男達は立ち上がると街頭で照らされている学園都市へと消えていった。
 そしてその日からその男達が上条へ突っかかって行くことはなくなった。
 そしてその日から第七学区にいた不良が七人消え、変わりに風紀委員希望者が7人増えたのは、また別のおはなし。
 そしてその7人の中で、逃げ足大王とその手下が目指すべき目標となったのも、また別のおはなしだ。
Secret

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