上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 上条当麻と御坂美琴の恋人ライフ2年目。上条は高校3年生、美琴は高校1年生になっていた。
 約1年前から受験勉強をしていた美琴は何の問題もなく常盤台中学を卒業、高校へ進学。上条も彼女の家庭教師のお陰で補習を受けないで済む学力を得ていた。
 両家の親との交流も稀にあり、夏休みや年末年始、ちょっとした連休には食事会などと完璧上琴ルート一直線なカップルなのだ。
 ―――が。

「最近、美琴の様子がおかしいんだよなぁ…」

 上条当麻は学生寮の自室にて頭を悩ませていた。
 美琴の様子がおかしい。と言っても、高校生になり寮の規則が緩くなったのか週末には上条の部屋に入り浸ったり、大学入試を来年に控えた上条の家庭教師を続けて、休憩中には猫のように喉をゴロゴロ鳴らせて上条座椅子を堪能してるのだが、何かが引っ掛かっていた。
 一体いつからこの違和感というか変化に気付いたのか。正確には覚えてないが、たしか美琴の16歳の誕生日の時…。




「ハッピーバースデー! 美琴たーん!」
「えへへ。ありがと。でもたん言うな」

 逆行再現レベル4のカップルは、人目も気にせず洒落た店でいちゃいちゃ誕生日…は流石に恥ずかしかったらしく、上条の部屋で2人で小さな誕生会を開いていた。
 美琴の誕生日となると今現在常盤台3年の元ルームメイト白井黒子が何を仕出かすか分かったものではなかったが、美琴が前もって言っておいたのか白井他友達とはまた別の日に誕生会を企画しているようなのだ。
 テーブルの上には2人で食べきるには大きいワンホールのケーキと、美琴の誕生日という事で上条さん特性チャーハンが置かれていた。…もちろんテーブルの半分だけに。相変わらずテーブルを挟んで食事を取る事を知らない電撃姫は、これまた猫のようにスリスリと体を擦って甘えてくる。
 そしていよいよ誕生日ケーキのケーキ入刀。上条が包丁を持ち、ケーキに一太刀入れようとした所で美琴から必死の静止を求められた。頬を染めて涙目の上目使い。
 …はっ! これはいつもの「何かを求めている状態」だ! 考えるんだ上条当麻。今や君は美琴の彼氏&将来の旦那。嫁の思考を読み取り、正解を導かなくてはいけない!

「い、一緒に切るか? ケーキ」

 その言葉を受けて美琴は心底嬉しそうに最高級の笑顔で頷いてくれた。ぐっ…、可愛いじゃねぇか。俺も美琴たんラブ末期のようだ。
 普段何気なくケーキを切り分ける行為も、この2人を前にしたら将来の為の予行練習に変わる。もちろんその将来とは美琴の夢が叶う愛の儀式の為。
 今、美琴の頭の中ではドレスを身に纏い、スポットライトに当てられて巨大なウエディングケーキに入刀してるシーンが見えており、周囲からは盛大な拍手が送られているハズだ。…が、もちろんそんなシーンを想像してしまった美琴は、

「ふにゃー」

 気絶して上条の介抱を受けるはめになるのだが。




「…そうだ。そうだった。美琴が16歳になってからだ。ちょっと様子がおかしくなったのは!」

 上条は回想シーンの煙をかき消し、戻って来た。
 しかし何故だ。あの日何か美琴が不満や不安になるような事をしただろうか? …いや、思い出せない。こういう所で忘れっぽい上条さん。
 確かに覚えているのは自分と美琴の名前が彫られたネックレスをプレゼントした事だけ。ケーキをモフモフと食べている美琴に後から奇襲攻撃とばかりにネックレスを掛けたんだ。緊張したから覚えている。その後ケーキを頬張ったまま固まっている美琴も覚えている。
 付き合って1ヶ月であげたクリスマスプレゼントの仮結婚指輪と合わせて1時間近くウットリ眺めてた思う。…俺を座椅子に使ってな。疲れた。

「っと。こんな事はどうでも…よくはないけど、今は美琴の事だ。おさらいしてみると…」

 そう言って上条はルーズリーフに「御坂美琴」と書いて、その下に箇条書きでその原因となりそうな事を書いていく。



  ・16歳の誕生日までは普通だった
  ・様子がおかしいと感じ始めたのは誕生日の翌日から
  ・誕生日は自分の中では大成功、美琴も喜んでた
  ・プレゼントのネックレスも名前を間違えるとかのミスは犯していない
  ・週末には泊りがけで遊びに来る
  ・平日のメールや電話のやり取りも欠かさない



「…これくらいしか思い浮かばねぇ」

 こうして見ると導き出される答えは「勘違い」なのだろうか? 自分の思いすぎで美琴は至って普通だと。
 いや、違う。今や上条は何を隠そう美琴マスターなのだ。ツンデレ(今はとてもそう言えたものではないけど)美琴の思考や行動には細心の注意を払っていたはず。では見落としてしまったのか。美琴から発せられている電波を。…くっ! 美琴マスターの名が泣くぜ!

「…ん? 待てよ? そういえば美琴の奴―――」

 美琴の誕生日の翌日が休日で休みだったため、また泊まっていくのかと思っていたが「本屋に用があるから入って来るね」って行ったらその日は自分の寮に帰ったんだった。
 そしてさらに次の日部屋に遊びに来た美琴は夢中に本を読んでいた。壁を背に体育座りで本の表紙を隠して読んでたため何の本を読んでいたのかは分からなかったけど、じっと読んでいたのを覚えている。
 平日は一応自分の寮に帰ってる美琴は、時間が遅くなったと思ったのか急いで帰っていった。…その本を俺の本棚にしまって。

「これは謎を解く鍵だぜ…」

 そして上条は本棚を探し出す。
 そして―――

「こ、これ……はっ!?」






「はぁ…」

 御坂美琴は公園のベンチの上で溜息を吐いていた。周りをキョロキョロと見渡し、ポケットから愛用のゲコ太財布を取り出してまた溜息を吐く。

「あーぁ。部屋にはなかったし…、また買っちゃうかなぁ…。でも一度読んだものだし…お金勿体無いよね…」

 美琴の溜息の理由。それは今現在上条が発見した本。この本を美琴は無くしたと思っており、絶賛探し中&再購入検討中なのだ。
 2000円のホットドッグを躊躇い無く買う美琴が1000円もしない本を再購入するのに戸惑っている辺り、上条美琴への意識が強いのかも分からない。
 …が! その思いを上回るのがその本の内容。あの本は今の美琴にとっては聖書なのだ。それ故に悩ませる。
 で、でも私は上条(仮)美琴よ? 欲しいものひょいひょい買っちゃうとお金のやり繰り大変じゃない。我慢我慢。ここは我慢。
 そして10秒後―――

「だーーーーーーーーーっ!!! もう無理っ! 買う! やっぱり買っちゃう!」

 美琴は我慢出来なかったようだ。ベンチから勢いよく立ち上がり、本の再購入を決意した。

「よ」
「…ふぇ?」

 しかし、そんな美琴の前には彼氏の上条当麻が立っていた。

「さっきから呼んでたのにお前何かブツブツ言って聞こえてなかったし…、ちょっと泣きそうになったぜ」
「あ、あああああアンタ! いつからそこに!? い、今の聞いたの!? 聞いちゃったの!?」
「へ?」

 美琴はいきなり目の前に現れた旦那(仮)の上条にへそくりでも見つかったかのようにあうあうする。
 あうあうあう。違う、違うのよ当麻。このお金は…そう! あの…、ごめんなさい。

「探してるのは、これじゃないか?」
「ふぇ?」

 そして上条は美琴の前に先ほど部屋で見つけた本。
 それは―――

「きゃーーーっ!!! これよ、これこれ! ど、どどどどこにあったの!?」
「俺の部屋の本棚。お前が慌てて帰った日に自分で本棚にしまったの忘れたのか?」
「うっ」
「それにその本…。結婚情報誌じゃねぇか。高校生がなんつーもん読んでんだよ」
「うっ」

 そう! 美琴が探してたのは結婚情報誌ゼクsげふんげふん。
 16歳な美琴は法的には結婚できる歳になったのでこの本を読んでニヤニヤしてたのだ! 何やってんの!

「そしてその本を見つけてやっと気分が晴れたぜ! お前がここ数日様子がおかしかった訳が!」
「なっ、ななな何の事? わ、わわ私どこもおかしく…」

 テンプレの様にテンパっている美琴を前に上条は続ける。
 そう。この本だけでは問題が解決していない。いや、解決したのかもしれないがまだ半分だろう。

「美琴たん! お前は俺がまだ17歳って事にあうあうしていたはずだ!」
「!!!」
「学年は2つ違うが俺の誕生日は2月14日だ。つまりはその日までは1歳差。自分は16歳で結婚出来る歳になったのに何で当麻は2つ年上なのに17歳で結婚出来る歳じゃないの? …と、思っていただろ!」
「!!!!!!」
「更に言えばその考えを持ったのが誕生日のケーキを切り分けた時だ! お前はあの時結婚式を想像してあうあうしてた筈ッ!」
「!!!!!!!!!」
「だが安心しろ美琴たん! 俺が17だろうが、18だろうが美琴たんへの愛は変わらないぜ! てかもう半分結婚してるようなもんだしな!」
「!!!!!!!!!!!!」
「つーわけだ! カモーン!! 美琴たーん!!!」

 そして上条は両手を広げて美琴に「飛び込んで来い」の合図を送る。
 上条が言い放った言葉は、美琴に突き刺さった。全てを見破られた犯人のように。
 ふっ。名探偵シャーロック・ホームズに憧れるメガネの小学生も納得する名推理だぜ。見な。美琴たんを。感動のあまり真っ赤になってプルプルしながら帯電して……、え?

「と、当麻のアホんだらーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「ぎゃーーーーーーーッ!!!!!」

 しかし美琴はそんな上条に対しレベル5の電撃を浴びせる。
 この圧力は久しぶりだ。付き合ってからは漏電する事はあってもこれだけ恐怖がある電撃は受けた事がない。2年前の俺はこんな恐怖と戦っていたのか。俺すげぇ。
 もちろんそんな電撃も幻想殺しで無効化したのだが、不意&恐怖&圧力から上条は尻餅をつき、涙目になってしまった。

「な、なななな何すんですか美琴たん! 彼氏殺す気か!」
「うっさいわね! 公衆の面前で彼女に恥ずかしい思いをさせる彼氏がどこにいんのよ!」
「へー?」

 そう言われて周りを見たら、確かにこのベンチを囲むように学生さん達が溜まってる。
 その光景を見て上条は暫く無言だったが、やがて立ち上がりお尻についた砂を払うと1回咳払いをし、

「あはははは。失っ礼しましたぁーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 と言って美琴の手を引きその場を猛ダッシュで逃げていった。
 恐らく、いや確実にその現場を見た生徒は逆行再現レベル4の餌食になっただろう。そして余談だが、学園都市の都市伝説でこの逆行再現がちゃっかり記事になっているらしい。




「本当に…、すみませんでした」

 上条は自分の部屋まで戻り、部屋に入った瞬間に美琴の前で土下座した。目の前の美琴は腕を組み無言で上条を見下ろしている。

「面を上げぃ」
「はっ…」

 電撃姫の言葉を受け上条は頭を上げた。その後も暫くは不機嫌そうな面持ちの電撃姫だったが、ひょいとしゃがみ両手で上条の両頬を挟んだ。

「むふ」
「…ホント?」
「ふぇ?」
「ホントにこれからもずっと好きでいてくれる?」
「むふむふ」
「ホントにホント?」
「むふ」
「えへ」

 美琴の問いに上条は頷く事しか出来なかったが、それだけでも美琴は嬉しそうだ。
 そして―――

「私も大好き。当麻」

 上条に優しいキスをした。
 上条美琴への道も、逆行再現レベル5への道も、そう遠くない。

Secret

TrackBackURL
→http://pintakamikoto.blog134.fc2.com/tb.php/163-39cf5862
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。