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「へ? 当麻ってまだ15歳だったの?」
「おうともよ。上条さんの誕生日はまだ来てないのでありますのよことよ」
「ふ、ふーん。…ち、ちなみにいつなの? 誕生日」

 雪が残る学園都市。今日は2月12日で街中はバレンタイン一色となっていた。11月22日の「いい夫婦になる日」で目出度く恋人になったカップルも、これから新たに想いを打ち明けようとしている女の子にもドキドキのイベントデーだ。
 上条当麻と御坂美琴は、いつものように学校が終わったら合流し公園の自販機前まで来ていた。上条たちは公園に来るまで誕生日の話になり、美琴は上条がまだ15歳である事を知る。
 そういえば付き合って誕生日について聞いてなかった。…が、運がよかったのか彼氏である上条の誕生日はまだ来てないらしい。美琴はホッと慎ましい胸を撫で下ろすも、上条から返って来た返事は予想の斜め上をいく返事だったのだ。

「2月14日だけど」
「え」

 恐るべし、上条当麻。まさかまさかのバレンタイン当日に誕生日とは。ここでも尚、フラグ体質を予感させるとは。
 もはや頭の中は上条一色になっている電撃姫は、イベントデーにはプレゼントしてあげたいと思う。つまりは2月14日のバレンタインと上条の誕生日、同時に2個もしくは究極の1個をプレゼントしなくてはと演算を開始した。
 バレンタインのチョコレートは明日にでも材料を買って作ればいいとしても誕生日プレゼントはどうしよう……。チョコ作って「これ誕生日プレゼントと兼用だから!」って言っちゃう? いいやダメだ。そんなんじゃ手抜きって思われちゃう。で、でも今日入れてあと2日で何をしろと…? 編み物は無理だし…、うぅ…。
 まったくもう当麻はっ! あげる私の身になって生まれてきて欲しいわねっ!
 ……と、心の中で激しく思う美琴であったのだが、もちろん上条からして言えば「そんな事言われても」状態である。

「美琴? どした?」
「…ふぇ? あ、ご、ごめん。考え事してた」
「そっか。で? 今日はこれからどっか行くか? それとも帰る?」
「そ、そうね…。凄く行きたいんだけど、今日はどうしても外せない用事が出来たみたい」
「そうなの? じゃあ、そこまで送っていこうか?」
「だ、大丈夫。ありがと」
「おぉ。じゃあまた明日な」
「う、うん。遅刻しないでよねっ!」
「はいはい」
「ハイは一回って言ったでしょ!」
「はい」

 そう言って上条は手を一回だけ軽く挙げると帰っていった。美琴はその背中を見送り、見えなくなると一瞬にして携帯を取り出し某検索サイトで『彼氏 プレゼント 誕生日』と入力。調べにかかった。…が、美琴がいいと思うようなプレゼントが見つからず、携帯な事もあってか検索しづらい。

「うぅ…、どうしよう。もう明後日なの―――」
「話は聞かせてもらいましたっ!」
「に?」




 美琴が携帯を見ながら涙目になっていると、自販機の後ろから初春飾利と佐天涙子が出てきた。一体いつからそこに? と、美琴はフリーズし頭からボボボボと煙を噴出している。

「す、すみません御坂さん。盗み聞きしようとしたわけじゃないんです。ただお二人の邪魔したくなくて…、隠れてたら出るタイミング失って」
「そ、そうだったんだ。別によかったのに」
「いいなぁ御坂さんは。彼氏とラブラブでさぁ。ねー初春?」
「はいっ。羨ましいです。御坂さん」
「あぅ…」

 美琴は上条絡みではすぐに真っ赤になるのが癖というか体質みたいで、それを見た初春と佐天も顔をニヤケさせずにはいられない。だってあのカッコよくて頼りになる御坂さんがこんな…、ねぇ? 真っ赤に…ねぇ? にやにや。
 
「……っと、そこで悩める御坂さんに朗報があるのでした!」
「…ふぇ?」

 佐天はそう言うと両手を上げると、隣にいた初春はマウスパーカッションでドラムロールをし始める。…うまい。初春さん、何者?
 そして暫くすると「じゃんっ!」と初春が鞄の中から白井のテレポート並みの速さでパソコンを取り出すと、その画面を美琴に見せた。佐天は片膝だけ地面に着けて、初春のパソコンに向かって両手をポンポンの様にフリフリしている。美琴は一瞬の出来事にちょっとだけ後ずさりするが、パソコンの画面も気になったのでとりあえず見ることにする。何かのサイトのホームページらしいけど…、なになに―――?

「『今年のバレンタインはこれっ! ○○社がプレゼンする愛を深めるチョコレート』って…、なにこれ」
「今女の子の間で大ブームなんですよ? 何でもニュースで紹介された時にレポーターの人があまりの美味しさに気絶したとか」
「そ、それは凄いわね…。でもチョコは…その、自分で作りたいって言うか…その…」
「チョコのように甘いですね! 御坂さんはっ!」
「なっ、なによ? 何が甘いって―――」
「例えば…そうですね。クッキーと御坂さんが好きなゲコ太のキーホルダー、彼氏さんから貰ったら嬉しいのはどっちですか?」
「そ、そんなの…両方嬉しい、けど」
「でもクッキーは食べ物ですからなくなってしまうんですよ? でもキーホルダーは形として残ります。なら―――!」
「…!」
「チョコは買って誕生日プレゼントを手作りするべきですっ! 形残る思い出の一品をっ!」
「!!!」
「(初春…今日はなんか熱いね。能力が暴走してるのかな?)」

 美琴は初春の言葉を受けて完璧に固まっていた。そうよ、そう。チョコはなくなっちゃうけどマフラーとか指輪みたいに形残る物なら、その後もずっと見る事が出来てふにゃふにゃになれるじゃない!

「でもこのチョコ今学園都市じゃ売り切れみたいなんですよ。14日に再入荷って言ってましたけど」
「なっ…! 超ギリギリじゃない。学校が始まる前はお店開いてないみたいだし…、終わったら速攻で買いに行かないといけないわね」
「私達も一応その日に探し回ってみますよ! 暇ですし、初春も非番なんだよね?」
「はい! 私もどんなチョコか気になりますし…御坂さんも2箱余ってたら確保してくださいね」
「分かったわ! …となると、あとは誕生日プレゼントだけど……うん。これは自分で考えるわ。ありがとね初春さん、佐天さん」
「「いいえー、私達は恋する乙女の味方ですからー」」
「お礼は後でするからっ。それじゃあ、またねっ!」
「「頑張ってくださーい!」」





 そしてその夜の常盤台女子寮208号室。御坂美琴は首をコキコキと鳴らしながらドアを開いた。

「うぅ…、何よ。たった1秒遅れただけじゃない」
「お姉さまお帰りなさいませ…って、どうしましたの?」

 部屋には白井黒子が机で何やらパソコンをいじっていた。振り返る時に見えた風紀委員の腕章から、それ関係の事でレポートなり調べ物をしていたのだろう。仕事上がりなんだろうが、終わったら外せばいいのに…。
 美琴はベッドの上に鞄を放ると、ブレザーと靴下を脱いでベッドに倒れ込んだ。

「寮監に門限破りだって技かけられたのよ。たった1秒オーバーだけだったのに」
「あぁ。わたくしも以前その屈辱を味わいましたわ。寮監の腕時計は超最新式の電波時計ですので正確みたいですし」
「電波時計…、ふふっ。電波時計ね……」
「それにしても随分ギリギリで帰ってこられたのですわね」
「う、うん。色々探しててさ…、結局いいの見つからなくて気付いた時には門限10分前で」
「そうですの。何をお求めになられてたんですの?」
「ふぇ? そ、それは…」
「あら…、まさかお姉さま!」

 白井は確信した。美琴が口ごもる時は100%類人猿、若造、ボンクラ…もとい上条当麻に関する事なのだ。そういえば今日は2月12日。2日後には美琴が食いつきそうなイベントがある。ならば、今日門限破りまでして探してた物というのはっ……!

「お姉さまっ! 黒子にも愛のこもったチョコレートを下さいましぃ~!」

 しかし上条に関する事で邪魔したりすると雷神になる事を白井は知っている。それはクリスマスの翌日に体験済みだ。あの恐怖は忘れない。レベル4で風紀委員の自分が顔ドラムで謝るしか道は残されていなかったのだから。
 なので白井はもう上条×美琴カップルの仲を引き裂く事はしないが、美琴LOVEなのに変わらないらしくその後もベタベタしてきてるのだ。

「チョコ? あぁ…チョコね。そうね、黒子にはお世話になってるから手作りチョコをあげる」 
「お姉さまっ! 黒子はっ…黒子は感無量ですわ! …って、『には』? 上条さんへの手作りチョコの材料を探してたんじゃありませんの?」
「ふぇ? ち、違うわよ。材料探しならここまで遅くならないでしょ」
「それもそうですわね。では…何を?」
「えっと…、うん。そう。黒子は私からプレゼントさせるんなら何が欲しい?」
「お、オネエサマ!? そ、そそそそそれでしたら! わたくしはお姉さまの熱いヴェーゼをっ―――」

 と、白井は自身の服をテレポートさせ下着姿で美琴に飛び掛か―――

「やめんかっ!」
「あああぁぁっ!!!!」

 ―――ることはなく、電撃で鎮められた。真っ黒子とまではいかずとも、茶子くらいのミディアムに仕上げられる。美琴はそんな白井をベッドに寝せ、布団をかけてあげると着替えを持って脱衣所へと入っていった。
 ……え? プレゼントはキス? で、でもでも形に残らないし……、あうあう…。




「うがーーーーーーーーーーーっ!!!」

 翌日の金曜日ではない13日。美琴は常盤台の寮にて頭を掻き毟っていた。上条へのプレゼントを決める&作るのは今日しか出来ない。明日は放課後に気絶チョコを買いに走り回る予定だし、その後に上条を呼び出しそのチョコとプレゼントを渡さないといけないからだ。
 なので美琴はどうにも焦っていた。今日も学校が終わり上条と途中まで下校して寮まで帰ってきたのだが、パソコンで調べようにも昨日の白井が言った「熱いヴェーゼ」が頭から離れないのだ。
 聞くんじゃなかった…、聞くんじゃなかった…。まさかキスのプレゼントが他のどんなプレゼントよりもいいって思ってしまうとは…、あうあう…。

 ※美琴がただ単にキスしたいだけという願望もありますが、本人は気付いてないようです。


「うぅ…、とりあえず黒子との約束もあるしチョコの材料買って来よう」

 白井は昨日の夜仕上げたと思われる風紀委員のレポートを支部に届けている最中だ。すぐに帰るってメールが入っていたが、一緒に来てべたべたされては選びに集中出来ないし、プレゼントなんだから中身が知られない方がいい。
 美琴はそう思うと、白井の机に置手紙を書いた。『アンタのチョコの材料買いに行って来るから大人しく待っててね』っと、これなら完璧絶対待ってる。荷物が多くなっても寮監の腕時計は電波時計だし? くくくっ。などと考えていると門の前に寮監が立っていた。まだ門限ではないだろうけど寮生の出迎えでもあるのだろう。

「おい御坂。今から出掛けるのか? 門限まであと1時間だぞ」
「す、すぐに戻りますから大丈夫です」
「そうか。1秒でも遅れたらまた―――」
「いっ、行って来まーすっ!!!」
「あっ! こらっ! 話はまだ……ったく、しかしあの顔本当に時間内に帰ってくるか今日は何か秘策があるのか」

 美琴はとてもお嬢様には感じさせない逃げっぷりで難関をクリアした。ここで時間をくうわけにはいかないし、少々の誤差で帰ってこないと後々気付かれて部屋まで押しかけてくるかもしれない。
 
「(とりあえずセブンスミストなら全部揃いそうね)」

 走れ美琴。風のように。でも上条さんとの待ち合わせに遅れた時のような磁力で街灯をつたって行くのは他の学生が危ないのでやめましょうね。





「こっちは90gで…、ふんふん…」

 美琴は女子寮からセブンスミストまでの移動時間を更新するとバレンタインの特設コーナーで買い物をしていた。上条との夫婦生活を経て磨かれた買い物術はここでもいかんなく発揮されている。もう選び方が完璧に主婦なのだ。14歳でもなければお嬢様でもない。するとそこへ―――

「ここも売り切れなんですかぁー…」
「ん?」

 何やら聞いた事のある声。しかも頻繁に。それも嬉しくなる。さらにドキドキする。

「明日入荷!? しかも予約出来ないで先着300名様っ!? わ、わかりました。なるべく早く来ます…」
「(や、やっぱり当麻だーーーっ! な、ななな何でこんな所にっ!!!!)」

 その声の主は美琴の彼氏である上条当麻で、何やらレジ員の女の人と(楽しそうに ※美琴ビジョンです)会話していた。売り場には女の子しかいないのでそこに男がいるってだけで場違いなのに、よりにもよって何だって自分の彼氏がそこにいるのか。
 美琴は売り場全員の視線が上条に向けられているのを知ると、反射的に隠れてしまった。ここで話かけられると絶対あうあうするし。うぅ…、ごめんね当麻。

「はぁ…明日が勝負かー」

 上条はそんな事を言って帰っていった。チラッと見たが買い物袋(エコバック)を持ってるところからすると買い物の帰りのようだけど…。美琴は上条の姿が見えなくなるのを待つとヒョイヒョイヒョイと近場にあったチョコの材料をカゴに入れてレジへと向かった。

「あ、あのっ…! 今の男の人は何て…?」

 そして美琴はレジ員に確認を取った。バレンタインのコーナーで探し物なんて怪しすぎる。まさかまた浮気っ!?(またって言うか美琴が勘違いしているだけなのだが)

「あぁ、ニュースでも取り上げている気絶するほど美味しいチョコを探してたみたいで。それで明日入荷しますよって」
「きっ、気絶チョコ…! 何でアイツが…や、やややや、やっぱり…!」
「あの…、お客様?」
「…ふぇ?」

 美琴はレジ員の返事にガクガクしていたが、再度呼びかけられて我に帰った。レジ員は目をパチクリさせているし、周りの買い物客もこっちを見てるし、後ろにはレジ待ちの女の子もたくさんいた。
 それを見た美琴はボンッという爆発音と共に真っ赤になり、

「こ、これ下さい…」

 と言ってカゴを差し出すといそいそとその場を後にした。猛ダッシュで。しかも適当に選んでしまったのか美琴が最安価だと思っていた額よりも2倍は高い値段だ。
 あは、あはははは……、うわーーーーんっ!!!




「はい、御坂おめでとう。二日連続で門限破りだな」
「うっ」

 美琴は上条を追いたかったが、気付いた時には常盤台の前まで帰ってきていてしかも寮監が眼鏡を光らせていた。

「じ、時間ギリギリのはずですけど…」 
「いいや、2秒遅れだ。残念だったな」
「(に、2秒!? これなら…、えいっ!)」

 美琴はその時間を確認すると電磁波で寮監の腕時計を狙う。気付かれない程の弱い電磁波だが、時計が受けている電波を演算し20秒ほど遅らせた。時間が経てばまた新しい電波を受けて元通りになるし、罰も受けないで済む! 一石二鳥だ!

「よ、よく見てくださいよー。ホラ、まだあと15秒も余裕あるじゃないですかー」
「おや本当だ。これは失礼した」
「あははー、いいですって。じゃあ私はこれで―――」
「でもな。こっちの時計は既に時間オーバーしてるんだよ」
「…」

 美琴は固まった。寮監は罠を張っていたのだ。美琴が何やら余裕な感じで寮を出て行ったもんだから自分の時計が電波時計だという事に気付き、電撃使いのレベル5である美琴は何かしらの能力で時間を戻すだろう、と。
 なので寮監は隠していたアナログの可愛らしい猫の目覚まし時計を差し出した。時間もぴったり! これなら寝坊しないよ!

「さて御坂。門限破り+寮内での能力使用の件なんだが…」
「ひっ!」
「最近編み出した新技の実験に付き合ってもらえないか?」
「あ、あの…そ、それは危険だと……」
「安心しろ。朝には起こす。何か言い残す事はあるか?」
「当麻ぁ…私、信じてるから―――」

 そして寮監は美琴に手を伸ばした。寮監さん、出来ることなら優しくしてあげてください。美琴にはまだやる事が沢山残っているんです。
 …という誰からかの願いが通じたのか、寮監が美琴を捉える事はなかった。それは―――

「白井…、どういうつもりだ」
「…ふぇ? く、黒子!?」
「お姉さまの罪はわたくしの罪ですわ。今の能力使用も追加し、わたくしが変わりにその罰を受けるんですの」 
「ほぅ…」

 寮監の前には白井が立っており、美琴は階段の上までテレポートさせられていた。

「黒子…アンタ」
「お姉さま…、チョコ、楽しみにしてますわ」
「はっ! あの置手紙!」
「えへへ、ですの」

 そういうと白井は小さく笑った。それを見た美琴は走りだす。白井の決意を無駄にしないためにも。最高のチョコレートを作ってあげようじゃないか。
 そして白井は美琴の姿を見送ると、寮監を見上げた。その目には恐怖は無い。本望だけだ。

「どうぞですの」
「では白井、何か言い残す事は?」
「I love forever お姉さま…、ですわ」

 そして鈍い音が常盤台女子寮のエントランスに響いた。黒子…、無茶しやがって…。みんなも10秒間くらい黙祷をお願いします。…死んでないけど。




 翌日2月14日。バレンタイン&上条当麻の誕生日当日。御坂美琴は常盤台の教室にて真っ白になっていた。
 昨日の事件の後、美琴は材料を持って調理室に行き、白井のためにチョコレートを仕上げたまでは良かったのだが、ある事を思い出し時間が停止していたのだ。そう。上条の誕生日プレゼント。手作りの予定だったからチョコは買って済まそうと思ったのに…。
 白井はあの後すぐに部屋に運ばれベッドで寝かされていたらしい。無事ではないけど無事だ。白井のお陰でチョコも完璧な仕上がりだ。よかった。…って、あれ? でもよくよく考えてみたら白井のチョコに時間を費やし上条へのプレゼントにまで手が回らなかったような…。そう思った美琴は白井をチラッと見るが、冷や汗をかいているだけだ。うん。まぁ勘違いだったら悪いし、そっとしておこう。

「終わった…、終わったわ。私の彼女としての幸せライフが…。誕生日プレゼントも用意出来ない女なんて……、うぅ…」

 などと考えていると、ゲコ太携帯が鳴り出した。今日は朝から真っ白になっていたので上条との登校にも間に合わず先に行ってもらって、後から白井と一緒に登校したのだが、この着信音を聞くとどうやら上条からのメールらしい。
 いつもはハイテンションで携帯を開く美琴だが、今日だけは違った。だって…、バレンタインと誕生日の当日に一緒に登校しない彼女ってどうなのよ? ま、まままままさか別れようメールなんじゃ…!


  Time 2011/02/14 08:57
  From 当麻
  Sub
  ――――――――――――――――
  よぉ美琴たん。大丈夫か?
  今日の放課後なんだけどさ、俺用事
  あるから一緒に帰れないだ。悪い。

  でもちょっと話があるから6時くら
  いに公園の自販機前まで来てくれな
  い?


「…ふぁ」

 美琴気絶。それを見たクラスメイトはオロオロとしだす。どうしたのでしょう御坂様。何か悲しい事でもあったのでしょうか。オロオロ。
 美琴が気絶した原因は上条と一緒に帰れない&話があるから来てくれというメール内容。一緒に帰れないのは自分も一緒で、今日は初春や佐天に教えてもらった気絶チョコを探し回らなければいけないのでいいのだが、その後の話ってなに? 今の今までネガティブ思考だった美琴は、最悪の結末を予想し机に額から倒れ込んだ。音からして結構痛いと思う。

「(うぅ…、当麻ぁ…わだじぃー…)」

 その後の授業中も美琴から発せられている負のオーラに教員達は皆、美琴の事を指せなかった。





 キーンコーンカーンコーンというチャイム音と共に御坂美琴は光速を超えた。あまりの速さにまだ教室に残像が残っているほどだ。すみません嘘です。比喩です。
 学生鞄と大きめの紙袋を持ち懸命に走る。先生に注意される。謝る。走る。見つかる。謝る。見つかる。逃げる。
 昼間の状態からして美琴にチョコを渡すのはなかなか勇気が必要だったのだろうが、それでも憧れの御坂美琴へプレゼントということで渡してくれた。真っ白になっていた美琴もプレゼントは嬉しい。ありがとう。お礼はホワイトデーにするからね。
 美琴の持つ紙袋にはその常盤台の生徒達から貰ったチョコやらが大量に入っており、なかなかの重さを誇るが美琴は平気なようだ。それくらい切羽詰っている。
 せめてチョコだけでもゲットしなければ終わりだ。あうあうだ。

「申し訳ありません。先程完売したばかりでして…」

「うちは再入荷してないんですよ」

「ごめんなさいね。私もこれ欲しくって」

 美琴は公園のベンチで再び真っ白になっていた。大本命のセブンスミストもその姉妹店も売り切れで、やっと見つけたと思った某デパートでは前の女の人で売り切れになった。…不幸だ。
 ちなみに初春達のメールも、



  Time 2011/02/14 17:33
  From 初春さん
  Sub  ごめんなさい。
  ―――――――――――――――――
  一応4店舗くらい回ったんですけど見
  つかりませんでした……。
  すみません偉そうな事言っておいて…
  …。



 …という事らしい。美琴は「こっちも同じだから気にしないでいいよ」と送り、再度走り出した。チョコも無い、誕生日プレゼントも無い、これから来るであろう上条からの呼び出しにもチョコを探し回って行けないじゃもう好感度ガタ落ちだ。終わってはないのだが、美琴は何故か走馬灯を見始める。
 あぁ…、11月22日の美味しかった中華料理。12月25日の嬉しすぎる指輪のプレゼント。12月29日からの幸せだった夫婦生活。冬休み最後の日に貰った合鍵でちょくちょく遊びに行った日々。……ぶぇぇぇぇぇぇぇん。





 ―――とそこへ希望の光が差し込んだ。真っ暗&涙で曇っていた視界も一瞬にして晴れるくらいの希望。探してた気絶チョコが売れ残っている! しかも周りに買い物客無し!
 美琴は走った。夏休み常盤台女子寮の前で上条当麻に見せた「ごめーーん、待ったーーー?」に似た虹色でキラキラな背景も見える。

「「こっ、このチョコくださいっ!」」
「「え…」」

 しかしそのチョコを目当てにしていたのは美琴だけではなかったようだ。完全なる死角から現われたその買い物客は美琴と同じ物を指差している。
 普段の美琴なら引き下がるかもしれないが今回だけは絶対に下がらない。上条への最後の希望だし、何よりその買い物客が―――

「と、当麻っ! なっ、なななんでアンタがここにいんのよっ!」
「あれ美琴たん。どしたこんな所で」

 私の彼氏、上条当麻その人でした。あうあう。

「私のよ」
「いいや、俺の指の方が1間接分近いから俺のだ」
「なっ! そんならこうよ!」
「あ! お前っ! じゃあ俺はこうだ!」
「ちょっアンタ! それはずるいんじゃない!? 大体アンタ今日はバレンタインなの知ってる? 女の子優勢! レディーファーストでしょうが!」
「はて。欲しい物は欲しいんです」
「まさかアンタ。そのチョコで他の女の子口説こうとしてるんじゃないでしょうね! 私という彼女がいるのに! うぅ…」
「はい? あ、あの…美琴、たん?」
「彼女がいるのにぃぃぃ…、ふぇぇぇ…」
「あー…」
「あのー…、お取り込み中悪いのですが、どちらのお客様がお買い求めになりますか?」
「あ、俺買います」
「無視すんなや、コラーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「ぶふっ…!」

 美琴は頭から上条の腹にタックルをかました。飛んでくる電撃は打ち消せても、こういう物理攻撃にはまるで対策がないのです。 

「アンタね! 目の前で彼女が泣いてるのに無視しますか普通!」
「み、美琴たん……周り…」
「ふぇ?」

 チョコ売り場の前で何やら騒ぎを起こす&上条を押し倒す行為に他の買い物客が何事かと人だかりを見せている。美琴は昨日もこの状況になったのを思い出し、しかし今度はポンという可愛らしい爆発音で真っ赤になった。恋する乙女は彼氏の前ではこういうところも万全なのだ。
 そして上条は真っ赤になってモジモジあうあうしている美琴をなだめると、気絶チョコを購入し美琴を連れてその場をそそくさと後にした。うぅ…、恥ずかしい。





 上条と美琴は公園まで戻ってくると、ベンチに座り、息を整える。2月という事もあり、辺りは真っ暗で街灯の光だけが2人とベンチを照らしていた。

「はぁ…、ったく当麻のせいで恥かいちゃったじゃない!」
「ほぅ美琴たん。お前さんがそれを言いますか、ほう」
「大体アンタ、そのチョコ誰にあげるつもりよ!? もし他の女の子だったりしたら…!」
「はぁ? 違いますよ」
「じゃあ何よ。まさか自分で食べるわけじゃないでしょ?」
「うん。その…、お前にあげようと思って」
「…………………………ふぇ?」
「まぁあれですよ。逆チョコってやつですよ」
「…」
「あ、あれ? 美琴、たん?」

 美琴は完全に停止していた。それは昨日からずっと上条が自分ではない他の誰かにチョコレートを渡すものだと思っていたから。それがどうだ。実は上条は自分のためにチョコを探し回ってくれていたらしい。そう思うと恥ずかしくなる。上条がプレゼントしてくれるのもそうだが、そんな彼を信じれなかった自分に。うぅ…、ごめんね当麻。信じてあげれなくて。
 なので美琴は途端にツンツンモードのスイッチを切ってデレデレモードへと移行するのであった。

「えへ」

 美琴は上条の腕を抱くと、甘えるように頭を預けた。周りに人もいないので大丈夫。

「あ、でも私もそれ買って当麻にバレンタインチョコ渡そうと思ってたんだった」
「じゃあ…、これ6個入りみたいなんで半分づつにしますか」
「う、うん…」
「…? どした美琴」
「実は―――」

「―――って事があって」
「ふんふん。じゃあその友達2人分を抜いた4個で半分づつにしようぜ」
「…いいの?」
「いいよ」
「えへ」




 そして上条は袋からチョコの箱を取り出すと封を切った。蓋を開けると、チョコレートの甘い香りが広がり鼻をくすぐる。
 先程売り場のショーウィンドウで箱の中身を見たが、6個入りの可愛らしい一口サイズのチョコレート。美琴は「私からあげる」と言って一つ摘むと、

「ん」
「え?」
「ん!」
「えっと…?」

 そのチョコを半分咥えて上条に差し出した。
 待て待て。待つんだ美琴たん。半分づつってそっちですか? 2個づつじゃなくて2分の1×4個づつですか?
 上条焦る。これは予想外だ。想定外だ。せめていってもあーんぐらいだと思っていたので。すると差し出してから目を閉じていた美琴が何かを訴えかけるように上条の学ランを握った。上条はそれを受けると意を決し―――

「あ、あー……、むっ」
「んっ…」

 美琴のチョコを半分受け取った。受け取る瞬間に美琴がビクっとなって頬が染まる。上条はここが外でよかったと思った。もしも家の中で人目が完全につかなかったら内なる狼が牙をむいたぜ。
 美琴は真っ赤になってモゴモゴとチョコを食べているが、上条も負けず劣らずに顔は赤い。もうやめてこれ以上は。こっちの身(誰?)が持たないっす。

「ハッピーバレンタイン、当麻…」
「お、おう…」
「味…わかんなかった」
「そ、そうか」
「ねぇ、もう1個」
「も、もう1個って…」

 つまりアレをもう一回、しかもこちらからしろと? 死ねる…、色々と。壊れる…、色々と。
 しかし美琴が何か物欲しげだったので、上条はチョコを咥えて差し出すことにした。

「ん、んー…」
「んむっ」
「は、ハッピーバレンタイン、美琴」
「ふぇへ。んっ…、どう? おいしい?」
「……た、確かに味がわかんないな」
「じゃあもう1個あげるね」
「(ぐぉぉぉぉっ…、り、理性! わたくめの理性がチョコレートのようにトロトロに溶けてっ…!)」
「ん」
「……い、いただきます」
「っ…、は、ハッピーバースデー。当麻」
「…ふぇ? あ、あぁ…。そういや今日俺誕生日だったな」
「ごめんね。何かプレゼント用意したかったんだけど…、いいプレゼント思いつかなくて」
「いいよ。美琴たんにはいつもお世話になってますし」
「……えへ。ねぇ? もう1個ちょうだい」
「………わかりました」
「えへ」
「んー…」
「?」

 しかし上条はチョコを持つ事なく何かを考え始めた。美琴もどうしたのだろうとモジモジしながら待っている。
 上条の考えは添える言葉だ。美琴はバレンタインとバースデーを祝ってくれた。上条もバレンタインは祝ったが、あと1個は何にしようか。何か美琴にとって記念になるものは…と考えていると、答えはすぐに出てきた。そういえば付き合って今の今までこの言葉を言った事がないような。
 そう思った上条は最後の1個(2個残して)を摘むと口に運び、半分だけ美琴に差し出す。美琴もモジモジしていたが、上条の行為に待ってましたとばかりにそのチョコを食べにいくのであった。

「んぁ…、美琴」
「ふふぇ?」

 上条は美琴がチョコを受け取ったのを確認すると、

「好きだぞ」

 愛の言葉をプレゼントした。…までは良かったのだが、もちろんチョコちゅー4回目&そんな言葉を受け取ろうものなら最大級の爆発音と共に顔を赤くした。だって抑えられなかったんだもん。

「ふ…」
「え。うわっ、ちょっ! 待っ―――!」

 上条は慌てて右手を差し出そうとするが、美琴に腕を抱かれているので幻想殺しが出せない。触ってればもしかしたらと思ったが、そんな美琴に触れる前に―――

「ふにゃー」
「みっ、みごどだばばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!!」

 美琴はふにゃーとなりながら漏電したのだった。
 上条と美琴が食べた気絶チョコ。それは食べた人があまりのおいしさに気絶すると言われていたが、このカップルに関してはまた違った理由で気絶したらしい。
 雪が残る学園都市、日も沈みきっている公園のベンチの上で気絶なんてしようものなら翌日は風邪確定だが、お互いが高温だったのか風邪をひくことなく翌日も2人揃って仲良く登校したそうだ。
 そしてその登校途中―――

「言い忘れてたけど」
「ん?」

 美琴は上条の前に回り、

「私も大好き、当麻っ」

 背伸びで上条にキスをした。たまたまその光景を見た学生は逆行再現レベル4の餌食になった。
Secret

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